チェルノブイリ原発はプリピャチ市(原発作業員の城下町、人口約5万人)にあり、ウクライナの首都キエフは南へ約120㎞、北側の隣国ベラルーシの国境へ約7kmに位置にしている。ウクライナ側の被災地41,900 km2を「立ち入り制限区域および強制立ち退き区域」とした。原発から30km圏内を立入禁止区域とし、そこに住む135,000人(116,000という記述も見られる)を事故1週間後(5月2日)から強制退去させた。プリピャチ市の住民約46,000人は事故の2日後から避難が開始された。2市を廃市、94村を廃村、12村を埋め立てた。廃市廃村となった地名を記したプラカードが約200mにわたって30㎞圏内に並んでいる。
現在は存在しない廃市、廃村となった地名のモニュメント(2017年9月撮影)
表側
裏側
ベラルーシ共和国側は46,500
km2を「国営ポレーシェ放射線環境管理区」とし、住人22,000人を強制退去させ、92村を廃村、13村を埋め立てた。
4号炉から放射線は漏れ続けていた。7か月後に耐用30年の覆い(石棺)が完成した。2016年に新石棺が旧石棺の上にかぶせられ、環境放射線はかなり低下した。
新石棺
シェルター(新石棺)に覆われた4号炉(2017年9月撮影)
付近の放射線1.5~1.8μSv/h
ウクライナ政府は放射線量が低下したことから2010年12月21日から許可を得れば原発から30㎞圏内への立入りを認めるようになった。私は独協医大、木村真三准教授の指導を受けながら福島県農民運動連合会代表の4人と共に2017年8月に1週間ウクライナへ行き、3日間30㎞圏内の視察をした。その時はまだ4号炉建屋内を視察させてもらうにはハードルが高かったが、その翌年頃からウクライナ政府は原発地域を観光地化し、積極的に観光客を誘致し、4号炉建屋内の見学、4時間のツアー(日本円に換算して約2万円)を実施しているという情報を得て、2019年8月に再度1週間ウクライナを訪問した。ウクライナ政府は4号炉の廃炉処理等の費用の捻出に苦労しており、観光収入をその一部にあてたいということである。
4号炉建屋内では中央制御室、
4号炉建屋内 中央制御室(2019年8月撮影)
緊急停止ボタン
左は説明者スタニスラフさん
安全保安作業員の部屋、
4号炉建屋内 安全保安員の作業室(2019年8月撮影)
医務室、給水ポンプ場などを見学した。模型を使って発電の原理、爆発の状況などの説明があった。
<チェルノブイリⅡ> 原発から約8㎞のところに地図にもない、住所もない大きな軍事施設があった。ここに入るには別の許可が必要で、観光客はほとんどいない。巨大な網のような鉄塔群、高さ90 m(一部150 m)、幅20 m、長さ800 m、受信専用レーダーで、西側諸国(主にUSA)の動きを探る地球規模の耳の役割を果たしていたとガイドの説明であった。
チェルノブイリⅡ(2017年9月撮影)
1960年代から計画あり、1970年代にチェルノブイリ原子力発電所と並行して建設された。外には2階建ての大きくない建物が一つあるだけで、約2000~3000人が地下に造られた9階建ての事務所で作業していたという。原発事故後撤退し、コンピュータ類は破壊された。外の建物にコンピュータの基盤と思われるものが大量に捨てられていた。
捨てられたコンピュータ基盤(2017年9月撮影)
チェルノブイリ原発は発電した電気を国外へ供給していたが、この旧ソ連の極秘軍事施設が多量の電力を必要とするために近くに原発を同時に造ったと考えることは妥当であろう。この施設は使用不可となったが、それに代わる施設がどこかにあるに違いない。USAなど西側の国もまた、同じような施設を持っているに違いない。
チェルノブイリや福島を原発事故跡としてみるのではなく、放射線の影響としてみてほしい。広島や長崎の原爆は大きな被害をもたらしたが、現在の核兵器から見れば小さい部類である。UNESCO憲章の冒頭部分「戦争は人の心の中で生まれるものであるから 人の心の中に平和の砦を築かなければならない」を多くの人が心に刻んでほしい。
30㎞圏内で記憶に深く刻まれたものに「犠牲消防士の慰霊碑」がある。
犠牲消防士の慰霊碑(2017年9月撮影)
非常招集を受けた28人の消防士が普段着のまま駆け付け、何ら放射線防護をすることなく作業をし、夕刻に家族へ病院にいると連絡した。そのままモスクワの病院へ連れていかれ、骨髄移植などを受けたがほぼ2週間のうちに全員が死亡した。ご遺体は強い放射体になってしまったため、鉛のお棺に入れられ、モスクワの特殊墓地に埋葬されているという。4号炉から10㎞圏内にある慰霊碑は事故10年後に現役の消防士らが建立したものだそうである。
30㎞圏内で最も環境放射線が高かったのは4号炉の上に設置してあった「爪」といわれる部分が置いてあったところで、202.3μSv/hあった。
4号炉の「爪」といわれる部分(2017年9月撮影)
「赤い森」と言われているところは放射能焼けしで事故後2日で150ヘクタール一面赤茶色になり、植物は立ち枯れた。現在は通常の色の植物が生えているが、15μSv/h程度で、一般環境としては高値である。
「赤い森」の現在 (2017年9月撮影)
<甲状腺摘出手術を受けた女性の話> 首都キエフでユーリァ ラルテンコさん(38歳、会計士)に話を聴けた。
甲状腺手術を受けた女性(2017年9月撮影)
首に手術跡がはっきり残っている。父親がチェルノブイリ原発の職員で、プリピアチ市に住んでいた7歳のときに被曝した。事故の2日後に大型バスで黒海沿岸へ連れていかれた。バスは1200台とも1500台とも言われているが正確な数はわからない。鉄道で避難した人たちもいる。何度か移転させられ、約1年後にキエフの集合住宅に入居した。12歳の時に甲状腺に異常が見つかった。23歳(2002年)で甲状腺摘出手術をうけた。医者は第三段階の腫瘍で、放っておくと癌になる状態、原発事故が原因であると話した。手術代金は無料だが、医薬品は自費。母親が被曝証明を取ってくれたが、就職や結婚の障害になるかもしれないと取らなかった人も多くいる。
<自発的帰村者・サマショーロ> 原発から10kmと30㎞の間の村に住んでいる。ほとんどが年老いた女性。
自発的帰村者 (2017年9月撮影)
兵士が玄関の戸をドンドンたたき、住人の腕をつかんで連れて行き、強制避難させた。家の奥に潜んで残った住民もいた。その後に先祖代々の墓地の近く、住み慣れた家に戻って来た。避難先で一代限りの住宅を与えられていたが、それを放棄して前の家に戻って来たため、現在は住宅に関しての支援はない。電気代は年金から引かれ、水は井戸水で無料、燃料は冬季の暖房用も含めて槇(白樺)の手配を役所がしてくれる。日用品は2~3週間に一度販売車が来る。
新型コロナウィルス(COVID-19)と消毒
今年は1月中旬からトップニュースは依然として新型コロナウィルス(COVID-19)感染症である。ウィルスはDNAかRNAのどちらかしか持たず(COVID-19はRNAウィルス)、細胞膜がない。生きた細胞(宿主)に寄生して増殖する。これらの点が細菌と異なる。解ってきたことはCOVID-19ウィルスの突起が宿主細胞の"ACE2“蛋白と結合し、細胞内に入り込み増殖するということである。会食、カラオケ、ライブで感染するということは口腔内、舌表面にACE2が多く存在しているかもしれない。
対策の第一は個人の免疫力にある。自然免疫は非特異的に白血球が対処する。自然免疫力は年齢や生活習慣等によって影響を受け、50歳を過ぎると半減すると言われている。獲得免疫に期待したい。指令型T細胞がB細胞に抗体を作らせる。ウィルスの持つ鍵と抗体の鍵穴が合致したときに効果が表れる特異型であるが、鍵と鍵穴の関係を認識するまでの時間が必要である。指令型T細胞はまたキラーT細胞にウィルスをどんどん食いつぶせと指令を出すが、指令が強すぎると自己免疫疾患が憂慮される。消毒に関して消毒用アルコール(局方 76.9~81.4 v/v%)が有効であるといわれているが、高価、可燃物、場合によっては酒税の対象となることに注意が必要である。一般によく使われている次亜塩素酸ナトリウム(商品名ハイター、ブリーチ、さらしこ等)は0.05~0.1%(500~1000ppm)で有効であるが、アルカリ性であり、手指や器物(特に金属製)の消毒によくない点と脱色効果があることに注意が必要である。最近注目を集めたのが“次亜塩素酸水”である。名前はよく似ているがこれは酸性で、副作用は少なく手指にも使える。食品添加物としては使用されているが、消毒剤としての使用例が少なかったことと、新型のウィルスであったために経済産業省も当初は次亜塩素酸水は新型コロナウィルスに有効か否か「わからない」としていたが、4月下旬から「有効」であり。「手指に使用可」とした。商店の入り口に置いてある手指消毒薬は逆性石鹸(塩化ベンゼトニウム)が使われているものが多い
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