今もなお、中世の街並みを残し、多彩な文化や芸術を受け継いで来たチェコ共和国。
ヴルタヴァ川に架かるカレル橋と、プラハ城、そして聖ビート大聖堂の尖塔。 写真でよく見かけるこの美しい風景を見たくて
9月に訪れました。 ヨーロッパの秋は駆け足でやって来ると聞きますが、本当に記録的な猛暑の後の秋の訪れは早いでした。
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カレル橋の上には、ミュージシャン 大道芸人、土産物売りなどが並び 賑わっています。遠くの丘の上に カレル城の尖塔が見えます。 |
とうとうと流れるヴルタヴァ川 | カレル城前、衛兵が立つ城門。 |
衛兵は微動だにしませんが 観光客は勝手に横に立ち 記念写真を撮ります。 |
聖ビート大聖堂 |
14世紀ボヘミアを統治していたカレル1世が神聖ローマ帝国皇帝に選ばれ、カレル4世となると、プラハは神聖ローマ帝国の首都として、黄金時代を迎えます。 このカレル4世の時代にゴシック様式を用いて建築されたカレル橋は、全長約520m、幅は10m近くあります。
ヴァルタヴァ川には、すでに12世紀には橋がかけられていました。 最初は木造の橋、その後石の橋になりましたが洪水で流されました。
カレル4世は、当時の技術の粋を集めて強固な石橋の工事を始めました。 60年の歳月を経て完成し、それから600年もの長きに渡り、2002年8月も含め幾度もの大洪水に耐えて現在に至っています。 両側の欄干には、30の聖人像が並んでいます。 たくさんの観光客
が行き交う橋の上には、お土産物売り、大道芸人、ミュージシャン、似顔絵描き、などが並び賑やかです。 橋の上からとうとうと流れる
ヴァルタヴァ川を眺めていると、チェコ近代音楽の父と呼ばれるスメタナの交響曲、「我が祖国」第2番「モルダウ」を思い出し、一人で
感動してしまいました。
カレル橋を渡り、ボヘミア王国、神聖ローマ帝国の歴代王の居城だったプラハ城に向かいます。
衛兵が建つ門から城壁の中にはいると、城内には旧王宮、宮殿、教会、修道院等が立ち並び、一部は博物館や美術館として使用されています。 このプラハ城は、9世紀半ばに建築が始まり、カレル4世の時代に現在の偉容がほぼ整えられたと言われています。
城内で、遠くからでもその高い尖塔で目立つのは聖ヴィート大聖堂です。 中にある美しいステンドグラスの一つは、アルフォンス・
ミュシャの作です。 ミュシャは、19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパで花開いたアール・ヌー
ヴォーの代表的画家で、
しなやかな曲線と美しい色彩で描いた女性は、とても素敵です。
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プラハ城王宮内 | ミュシャのステンドグラス | 王宮のバルコニーからの眺望 左にカレル橋が見え、その先は 新市街。すぐ下は旧市街 |
ケーブルカーでペトジーン公園へ登り エッフェル塔に似た展望台から眺めた プラハの街。 中央はプラハ城。 展望台にはエレベーターはなく、フーヒー 言って螺旋階段を登って撮りました。 |
また城内には、黄金の小道という一角があります。 かつては錬金術師が住んでいたことから名付けられたこの一角には、
とても小さな家が並んでいます。 今は多くはお土産物店になっていて、その中の一つブルーの壁の本屋さんが、かつて
作家フランツ・カフカが仕事場としていた家です。
カフカと言えば、「眼をさますと、自分が寝床の中で一匹の巨大な毒虫に変わっているのを発見した。」と言うショッキングな
始まりの小説「変身」を若い頃読んで、「不条理とは」と悩んだ事を思い出し、なつかしい気がしました。
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黄金の小道 | 童話の家のようで とても小さいです |
カフカが半年余り仕事場に していた家 |
旧市庁舎にある天文時計を見ようと、旧市街広場へ行きました。 この天文時計は天動説を反映していて、1410年に作られました。
縦にふたつ並んでいて、上の時計プラネタリウムは、地球を中心にした天体の動きを、下のカレンダリウムは黄道十二宮の獣と
四季の農作業の様子を描いた暦です。 この上に窓があって、毎正時にキリストの12使徒や骸骨等の人形が現れては消えていき、
最後に鶏が鳴いて終ります。
広場中央にある緑色の像は、ヤン・フスの像です。 敬虔なキリスト教徒で、カレル大学の総長でもあったヤン・フスは、ローマ教会の堕落を批判して、火あぶりの刑に処せられました。
ティーン教会は、フス達宗教改革者が説教をし、フス派の拠点となった教会です。 80mあるその尖塔は遠くからでもよく目立ちます。
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天文時計 | 緑色のヤン・フス像 | 旧市街広場、ティーン教会 |
一通り有名なスポットを観光した後は、楽しみの気ままな街の散策です。 歩くのと、乗り物の利用の両方を楽しもうと、プラハの市電・トラムに
乗ってみました。 切符はあらかじめ購入し、乗車するときに自分で車内入り口の刻印機でチケットに打刻するシステムです。
1回1時間有効で乗り換え可能な切符は、地下鉄駅の窓口・自動販売機・かキオスクで買うことができ、12kcチェココルナ(約50円)と
とても安いです。 ちなみにウィーンに行ったら、途端に3倍くらいになりました。
改札はなく、降車の時もチェックなしですが、キセルはダメ。 時々、検閲の係員が抜き打ち検査するので、このときに有効なチケットを
持っていなかったら、かなりの罰金を払わなければなりません。
チェコの街は、石畳と路地が連なり建物に統一感があり、あちこちに教会があって「百塔の街」と讃えられる美しい街並みです。
住んでいるチェコの人に聞くと、家のドア一つ替えるにも、市に申請し許可をもらわなくてはならない不便さがあるそうですが、
そういう努力によって、この街の美しさは保たれているのですね。 教会では、よく無料コンサートが催されていて、ふと立ち寄った
教会でも、親切に夜のコンサートに是非来るようにと、勧められました。
ただ地下鉄の出口や道路にはゴミが捨てられていて、建物の壊れた箇所はそのままで、落書きも多く、少し荒れた感じはします。
バスでオーストリアに向かう車窓からの郊外の眺めは、とても殺風景で花も少なかったです。
それが国境を越えてオーストリアに入った途端、小奇麗な風景に変わり、家々の窓からは花が溢れていました。
でも、この国の経済発展はめざましいので、これから大きく変わっていくと思います。