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2001/06/06(20:15:11)

  [題]:ICインバータ基板のバックライト内蔵化キット作成手順。
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プロローグ
 4年程前に
BL(バックライト) 化の1次ブームがありました。この時は FHPPC で共同購入した NEC 製のフェライトコイル型
インバータと
EL(エレクトロルミネンス) そしておまけとしてインバータと EL を繋ぐ薄型2線式リード線が配布されました。

 約30名程の方々が配布OFF会で受け取り、殆どの人がまだ BL 化は初心者で当然予備のLXを用意し、インバータ+EL も
予備として2式注文している人達が殆どでした。
 その時既に各自各々の方法で ELBL に成功した達人の方々のバックライト機を目の辺りにして、アドバイスを耳にしながら楽
しい一時を過ごして、さて自分はどの様にBL 化するか試行錯誤の日々が過ぎて行きました。
当時まだ LX に完全内蔵化されたバックライト機は無く、LX にはインバータが外付けされていたりして、発色や発光強度もまち
まちでした。

 受け取ったコイル式インバータとELシートで、高さを何とか低くする為にインバータのフェライトコイルを削って割ってし
まい、発振しなくなった人。反射シートを剥がしたつもりが、偏向版まで剥がしてしまった人。液晶ガラスの糊取り作業で液晶
を割ってしまった人。同様に糊取り作業中に黄色いフレキシブルケーブルに無理な力を加えて、横線が発生してしまった人。
ヒンジのクラッチまで分解してしまった人等、先駆者達の知恵を出し合って如何に上手く BL 化すべきかが熱く議論されまし
た。

 そんな中で各人が考えて考案した方式が9番会議室に発表されるようになりました。当時Libret で高容量ハードディスクを
装着する為に、供筐の底面を切り取って無理矢理装着した「裏切り」方式や、「スピーカーのいて頂戴」方式「バックア
ップ電池のいて頂戴」方式
そしてついに「民族大移動」方式が発表され、完全内蔵化されたバックライト機が誕生した
ことで、一応の終結を向かえました。


 その後、BL 化の話題も少なくなり、今度はRAM 増設の話題に移って行きました。
BL ブームから約2年後に電気会社経営の佐藤氏が、IC型の小型インバータを紹介されて希望者にはそのインバータ(HV823)
が配布されました。
しかしインバータ単体では周辺回路部品を集めるのに時間が掛かったりして、
約1年後にその成果が発表されるようになり、
3年後にして小型ICインバータ共同購入の話しが持ち上がり、ELBL の2次ブームが起こりました。

 インバータが小型化された事により、
LX 内部に実装する場所が広くなったことでELBL 化が容易になりました。
しかし、今も変わらないのが糊剥がし作業と反射シートとしてバックプリントフィルムを利用した方式は受け継がれています。
糊を取らないで直接バックプリントを貼る方法をした人もいましたが、
やはり発光強度が若干落ちる事とコントラストも落ち
てしまうので、
糊剥がしはバックライト化するに避けて通れない言わば修羅場であり、 またこの作業時にLXをダメに
してしまう一番気を付ける所も、今も昔も変わらないです。
前置きが長くなってしまった。(^^;;


注意事項

●ICインバータ基板の
EL出力端子(7,6ピン)はインピーダンスが極端に低い為、作業時には直接手で直接触らない事。
 また熱にも弱いので鏝を長く当てない事。


●ELを繋がない無負荷時の出力電圧は約70Vac、ELパネルを繋いだ時の出力電圧は約50Vac を発生しますので、
 
感電しないよう手で触らない事。

●言わずもがなですが、
Own Risk です。壊しても誰も助けてくれない、と考えて取りかかりましょう。それには
 予備機があったほうが精神的にも気が楽です。また
十分に時間の取れる時に落ち着いて行った方が良いです。


部品類

・今回はキットなので部品類は全て揃っています。(ICインバータ基板とELパネルにバックプリントフィルムです)
 因みに、ICインバータ基板から出ている3本線は、赤色リード線が+電源、緑色リード線がGNDです。黄色リード線は
 ON/OFF信号でホーネットCPUの23番ピンに半田付けします。詳細は後述の<組立>の項にでてきます。


          ICインバータ基板                     ELパネル

ICインバータ基板の回路図を(fig1)に示します。必ずしも部品の値は一致していないところもありますが許容範囲です。
ICインバータ基板の搭載位置は、PCカードスロットのガイドピンとホーネットCPUの間に収めます。(fig2)


            (fig1)                      (fig2)


治工具類
必須の物は★印を、有ったほうがいい物を☆印、印の無い物は各人の好みで揃えてください。
★・セロテープ
★・トルクスドライバー#6
★・15〜20W程度の鏝とヤニ入り極細半田(6-4)
★・ピンセット
★・絶縁テープ
★・両面テープ
★・小型ニッパー
★・小型平ペンチ
★・無水アルコール
★・小型固定台
★・カッターナイフ
★・小型平型鉄ヤスリ
★・瞬間接着剤
★・ドライバーセット(6本入り)
☆・熱収縮チューブ
☆・ヒートガン
☆・ハンドニブラー
☆・ワイヤーストリッパー
☆・半田吸い取り線

☆・デジタルマルチメータ、またはテスター
・ルーペ
・ハサミ
・スポンジ付き鏝台
・キムワイプ紙(毛羽が出にくい紙)
・フラックス
・パーマセルテープ
・ダストフリー(ホコリ除去スプレー)
・単三電池ボックス(ワニ口クリップ付き)


液晶フレーム基板の取り外し
 LX の開腹手順はサラッと割愛し、LX を3分割した時点から話しを進めます。
まず、液晶画面枠のロゴシートを剥がす為に、画面の角に針を入れてシート枠をはぎ取ります。すると四隅がネジ止めさ
れて
いるのでトルクスドライバーで取り外す。
蓋の下側、つまり茶色いフレキシブルケーブルと GND 線が出ている下側のフレー
ムに大きいマイナスドライバーを左側から徐々に持ち上げ右側まで3本の支柱を折らないように注意して外しま
す。
(fig3)決して無理にこじ開けないことです。遠くから徐々にです。


           (fig3)                       (fig4) 

 次に一番小さい精密マイナスドライバーで、フレーム上側のステンレスフレームの間に差し込んで左側から徐々にテコの
原理でマイナスドライバーを液晶側に倒す様な感じで上フレームの6本の支柱を外します。(fig4)
特に蓋ラッチ部の2本を折り易いので少しづつ慎重に外してください。コツは両サイドから徐々に柱を外してゆき、
蓋ラッチ部を最後に外します。
(fig5)外したところは楊枝を入れてみました。


           (fig5)                      (fig6)

(fig6)の赤丸印計9本の支柱が外れたら、クラッチ部分は外さずに、液晶フレーム基板をピンセット等で持ち上げ、
液晶フレーム基板を少し傾け
ながらクラッチ部分の押さえを外します。蓋のラッチは外しても構わないです。
液晶フレーム基板を取り出したら、ステンレスフレームを外す前に、極細の赤ペンか黒ペンでもいいですが、先の細いペンで
液晶
基板と白いゼブラゴムに何カ所か線を引いて目印しとします。また、十字線も3隅を目視確認しておきます。


液晶ガラスの糊剥がし
 いよいよ糊取り作業のセッティングに入りますが、足のシッカリした回転できる固定台を用意します。まず小型平ペンチ
で液晶基板をカシメているステンレスフレームの爪を全て外し、ステンレスフレームを黄色フレキの反対側から徐々にゆっ
くりと外して行き、
液晶基板から外します。
 液晶基板と液晶を繋いでいる
黄色いフレキシブルケーブルには絶対に無理な力が加わらない様に固定台の上に載せ
、黄色いフレキを養生してパーマセルテープで固定します。
詳細は写真画像を参考にしてください。(たぶんもっと良い方法があると思います。過去には専用の木枠で固定した人も
います)液晶基板から液晶ガラスを持ち上げ、黄色のフレキに注意しながら反対側に倒し、フレキに余計な力が加わらな
い様に高さ調整して、液晶ガラスが水平になる様にします。黄色のフレキシブルケーブルは(fig7)のように若干の
たわみを持たせます。



                     (fig7)

 私の場合は、TYPE-Uの
ATA フラッシュカードを3枚並べて微妙な高さ調整は、紙をシム代わりに使って紙の枚数で調整
しました。またGND線の付いている液晶基板にはゴム板を入れて若干高くして、その上にパーマセルテープで固定しました。
 最終的に、開いた液晶ガラスを指で押しても黄色フレキにストレスが掛からない事を確認したら、液晶ガラスが前後左右に
ぶれない様にガラス面に両面テープで固定しました。(fig8)参照


                           (fig8)

 裏が白、表が銀色の反射シートを、角からピンセットで剥がし、後はペンチを使ってはぎ取ります。この時も結構粘着力が強
いので、フレキや液晶ガラスに注意しながら剥がし取り去ります。後はセロテープでひたすら糊取り作業です。(fig9)
慣れれば1時間で終わる作業ですが、新しい液晶と古い液晶では若干テープに糊が付いてくる量も違うので、2時間くらいを目
安にすればいいでしょう。
焦りは禁物です。


                         (fig9)

 糊取り作業が終わったら、2本のゼブラゴムと液晶基板側のゼブラゴムが当たる2ラインの電極、および液晶ガラスを
キムワイプに浸した無水アルコールで綺麗に拭き取り、最後にエアスプレーでホコリや塵を飛ばし、ルーペでゴミが付着し
ていないかを見る。あとは、カッターナイフでシムにした紙を切り、液晶ガラスを元の位置に閉じて液晶ガラスに付いた紙
のシムを剥がす。両面テープは都合良く紙側に付いてくる。液晶ガラス面をまた無水アルコールで良く拭き取り、固定台
から液晶基板を取り外して一次保管します。(fig10)

 外したステンレスフレームの右下に、2芯シールド線を通す為の穴をハンドニブラーで切り落とし、切り落とした面を平型鉄
ヤスリで面取りします。(fig11)


            (fig10)                      (fig11)

 次に蓋側のヒンジ部分の
GND 線が通る所に2芯シールド線を通す為の、 溝2ヶ所をカッターナイフでU字状にカットして
線の通り道を確保しておきます。(fig12)は同じ部分を角度を変えて撮った画像です。


                               (fig12)

 さて、ここまでの作業が終わったらELパネルの組み込みです。
まず液晶基板の位置合わせですが、基本はガラスの三隅にある十字線を合わせる。またマーカー印しも一致している事を確認
します。
 次にELパネルを挿入します。この時あまり奥まで入れると、ELパネルの黒い電極部分まで液晶ガラスに入って点灯時に
黒い影が出るので、ELパネルの黒色電極部分がステンレスフレームから1mm位出るようにします。
ELパネルの上にバックプリントフィルム(表面がザラザラした面をガラス面にする)をステンレスフレームが入る位置まで
入れます。
 液晶ガラスの上にステンレスフレームをはめ込んで、2芯リード線が切り欠いた穴から出ている事も確認し、ステンレス
フレームの爪を理想は対角線状にかしめてゆくのですが、手で押さえている近くから反対方向と対で均等に折り曲げて液晶基
板を小型平ペンチでカシメて行きます。

 次にここで、液晶のライン抜けが無いかを自作の「ライン抜けチェッカー」で調べました。(fig13)
もし、ここでライン抜けが有れば再度カシメている爪を外して液晶の十字線の点検、およびゼブラゴムと液晶基板の接触
ラインを無水アルコールで拭き、ルーペでゴミ等がないかを見て、再度ライン抜けが無くなる迄行う。十字線を合わせ込
めばまずライン抜けは無いはずです。ライン抜けチェッカーの無い方は、液晶ユニットを液晶パネルに組込んでライン抜
けチェックをします。液晶パネルに組込んで元に戻す時、2芯シールド線がヒンジに作ったU字溝を通すようにします。
(fig14)はELパネルの点灯確認をしているところです。(写真のELパネルはFHPPC共同購入時の物です)


            (fig13)                        (fig14)



 付属のICインバータ基板を、マザー基板上のホーネット側PCカードピンの位置に、予め絶縁用に透明なポリ塩化ビニールテ
ープを敷き、その上に両面テープでICインバータ基板を固定します。3.3V の電源は近くのタンタルコンデンサー(157)
(fig14)参照に半田付け(±極性に注意)し、EL の
ON/OFF 用信号ラインはホーネット CPU の文字を正面に見て、左端
から
23番Pin に半田付けします。(fig15)参照


           (fig14)                       (fig15)

最終的にICインバータ基板の高さがホーネット
CPU と同程度の高さであればOKです。

 次は液晶パネルとキーボードを組み合わせ、丸長ポールの中に2芯シールド線を通します。この時ポール内に2本の尖った
フレキサポート用の爪が出ていますが、その爪の内側を通します。
2芯シールド線は、マザー基板の
RAM 側を這わしますが、 パーマセルテープで要所々止めながらバックアップコイン電池脇の
穴を通してホーネット
CPU に添うように要所々止めて、インバータ基板まで引き回してきます。(fig16)参照


           (fig16)                       (fig17)

 最後に2芯シールド線の被服を剥き、長さを揃えて切りますが、シールド線は少し短めに切り、シールド線を捩って熱収縮チ
ューブを通して予備半田をし、赤白の線も予備半田をしてシールド
線からインバータ基板に半田付けして、その後赤白の線を
半田付けします。
 一応ショートしていないかデジボルで∞である事を確認してから、最後にまたポリ塩化ビニールテープを上から貼って絶縁し
てハード側の作業は終了です(fig17)参照。最終的には本当は、上に絶縁テープを張るよりは、ホットボンドで固めるのが
良いかもしれません。

 後は、組立戻して
CONFIG.SYS の頭にデバイスとして BLSWR.SYS を記述し、再立ち上げして [Fn]+[ON] で発振音と共に
モルフォ色に発光すればOK。\(^-^)/
もし、点灯しない場合は、ICインバータ基板のチップ抵抗(3.3MΩ)またはチップコンデンサー(10nF/100V)の半田付けが
剥がれている可能性が高いです。再半田をしてみてください。

ドライバは『ALL THAT FHPPC』と云うFHPPCのライブラリーデータパックのCD-ROMがあるのですが、そのLIB7(3)頁の#782に、
BLSW.LZh「バックライトON/OFFドライバ」があり、このドライバを使わせて頂いています。使い方の詳細は同梱のDOCをお読み
ください。@nifty会員であれば同じドライバを、LIB7#782 BLSW.LZhから入手できます。その他の入手方法はドライバ作者さん
のURLから直接DLできます。


             消灯時                        点灯時

 今回のELシートを接続した時の電圧は、43.2Vac でした。
無負荷時の開放電圧は73.2Vac ですから、約30Vac
が負荷であるELシートに消費されている事が解ります。


エピローグ
 昔のコイル型インバータより場所も取らないし、発光輝度もICインバータ+切れるELシートの方が見やすくなったと感じています。
時間と心に余裕が持てる時に行う事が成功への秘訣です。焦って行うと、チョットしたミスで大事なLXはジャンクと化します。
ELBL化の難易度が少しでも容易になれば、との思いで拙い文章ですが書き留めました。ELBL化の一助になれば幸いです。

 それにしても、まるで昔からLXに備わった機能であるかのような素晴らしいドライバーを提供してくださった、HARUYA氏
に感謝すると共に、改造の失敗談や成功の報告談等、FHPPC での達人の方々の英知の結晶である賜物に深謝致します。

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